ステンレス鋼への無電解ニッケルめっき

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ステンレス鋼への無電解ニッケルめっき

「ステンレス」 と聞くと 何を思い浮かべますか? 水筒、お鍋やシンクなど台所用品、お風呂の浴槽、
棚、建材など 私たちの身近なところで とても多く使われている素材です。
 ステンレス鋼は「耐食性が良い」というイメージで、商品を選んだことがある方も多いと思います。
では、ステンレス鋼の耐食性が良いのはなぜでしょう?
ステンレス鋼は 主成分である鉄にクロムなどが含有されています。 酸素と水酸基が主にクロムと結合し
強固な酸化被膜(不動態皮膜)を表面に形成します。この酸化被膜は数nm程度の厚さで、多少のキズがつ
いて除去されても、空気中の酸素と結合して再度 膜を形成する自己修復性を有しており、素材表面を保護
し続けてくれるため耐食性が良い状態を維持できてるとされています※。その他 ステンレスの特徴として
美観、耐久性、耐熱性などがあります。
 (※不動態皮膜が破壊される様な環境下では腐食します。使用環境・用途に応じて 素材、表面処理などを
  選択して下さい。)

 では「ステンレス鋼にめっきする」となった場合は どうでしょうか?耐食性の良い素材にめっきを施せば
「もっと耐食性は良くなる」と思っていませんか?
 ステンレス鋼に限らず金属素材にめっきを施す場合 酸化被膜が存在することで めっきの析出や密着性を
阻害し、無めっきや密着不良などの不具合が発生します。そのため めっきの前処理には酸化被膜を除去する
工程があり、ここが品質を決める「ポイント」となります。
 SUS304など一般的なステンレス鋼の場合 酸性溶液で強固な酸化被膜を除去し、Niストライクなど高濃度の
酸で活性化しつつ、酸化被膜の形成を抑えながら 薄いニッケルめっきを施すことにより 良好な密着性を確保
しています。

ということは。。。 ステンレス鋼の高耐食性の基である酸化被膜を除去して、めっきを施しているという事
です。めっき膜厚が薄い、素材端部(破断面)がめっき皮膜で覆われていない場合、めっき皮膜の選定を間違
えたりすると 腐食(赤錆)が発生することがあります。

 では なぜ ステンレス鋼にめっきするのでしょうか? ステンレス鋼は 強度、耐食性、バネ性、加工性など
に優れています。反面 電気伝導性やはんだ付け性が悪い、表面に小傷が付きやすいなどの課題もあります。
製品設計の際に耐久性・コストなど全体を考慮し 素材はステンレス鋼を使用、表面処理により欲しい特性を付
与するという考えが多い様です。電気伝導性であれば 銀めっき、金めっき、ニッケルめっきなど。はんだ付け
性であれば 錫めっき、ニッケルめっきなど。滑り性・撥水性・かじり防止なら PTFE分散めっき。装飾用途なら
 光沢仕上、梨地調、金色や黒色など。ステンレス鋼にない特性を めっき加工により付与することが可能です。

例えば SUS304材に 無電解ニッケルめっきを施した後 180度折曲げた場合

 ステンレス鋼にも色々な種類があり、含有成分(含有量)に合わせた処理方法が必要です。
(ステンレス鋼の種類については 表:代表的なステンレス材料とその特性、化学成分を ご覧ください。)
フェライト系、マルテンサイト系では めっき前処理でスマットが発生したり、酸に侵されやすい素材もありま
すので 前処理工程での注意が必要です。
どんな素材にも言えることですが、機械加工や熱処理などにより素材表面が変化(変質)していることもあります
ので、開示可能な範囲で情報を開示頂けると めっきによる不具合の回避がしやすくなります。

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