めっきは素材を金属皮膜で覆う技術です。高級な金属外観や多くの機能的特性が実現できる利点とは裏腹に根本的なめっきの弱点があります。めっき皮膜には、その析出機構上、無数の微細な孔があります。これをピンホールと呼んでいます。
ピンホールを通じて素材の鉄や真鍮、あるいは亜鉛合金に腐食物質が侵入し、素材の腐食を引き起こします。腐食物質は、空気や水分などがあります。これらによって素地とめっき皮膜の間に電位差が生じ、素地からの腐食を引き起こしています。
めっきのピンホールの多くの原因は、素材欠陥に起因します。素材欠陥のひとつに『巣穴(鋳巣)』というものがあります。 素材の鋳造時に発生したものや、めっき前処理の不備により生成された穴を巣穴と呼びます。亜鉛・アルミダイカスト素材などは、鋳造時の巣穴が多くあります。
また、MIM材(メタルインジェクションモールド)やロストワックスによるモールド材なども、成形時に非常に小さな孔があります。さらに、SUS303やSUM24L材など快削性の優れた素材は、めっきの前処理で微小な孔を生じてしまいます。
このような巣穴が点在すると、めっき皮膜では完全に覆うことができずに変色や腐食などの問題を起こします。
めっきする側としては、素材の性質を十分に理解し、適した前処理および下地めっきによりピンホールを抑える必要があります。