クロムの環境問題
環境問題はどの業界でも関心が高まり、使用不可物質調査など依頼を受ける事が多くなってきています。
クロムと聞くと、皆さんは、公害・危険というイメージをお持ちだと思います。
これは、毒性の高い6価クロムを扱った作業者の鼻中隔に穴が開く病気や肺がんが多く発生し、最近でも土壌に埋められたクロムスラグによる土壌汚染や汚染の報告がされていることによるものと思われます。
日本ではかつて「地盤強化剤」という名目で、埋立地の地盤の弱い地域にクロムスラグを埋め立てることが奨励されていたことや化学工場の跡地の問題から汚染がまだまだあり、現在進行形の公害問題でもあります。
但し、これは6価クロムだけの話で、金属クロムや3価クロムでは全く毒性はありません。また、めったな事で金属クロムや3価クロムが6価クロムに変わることはありません。自然界では金属クロム又は3価クロムの形で存在し、6価クロムの形で存在することはほとんどありません。(クロム鉱床中に存在するだけ)
図をご覧ください。これは、日本におけるクロムの分布図です。ほとんどのところが、地中に100ppm以上のクロムを含有しています。
「え!?自分の足元もクロムで汚染されているの?」と驚かれるかもしれませんが、クロムは、地殻中の金属の中で6番目に多い金属です。(アルミ、鉄、マグネシウム、チタン、マンガン、クロム、ニッケル、銅の順番)
河川で0.0001ppm、海水中に0.00007ppmほどあり、地殻中は不溶性状態で、水中では3価クロムの状態で存在します。ですから、足元にあるクロムもほとんどが無毒な状態です。(廃棄物として埋まってなければ)
3価のクロムは、毒性どころか人間の必須ミネラルであり、1日に50~200 μg必要とされています。これが無いと糖代謝に異常が発生し糖尿病を引き起こす可能性があります。